当院に40代女性が「口を開けると顎関節がカクカク音がする。顎が外れそうで食事するのがコワイ。」という主訴で来院した。各種検査と高度の開口障害より顎関節症と診断した。聞くと患者は内科整形外科、脳神経外科に他歯科2カ所を受診してきたという。
口腔領域だけでなく、全身病状がひどいようである。それゆえにドクターショッピングをしてきたものと考えた。顎関節症患者の85%は実は顎関節そのものに病変が認められない。もちろん顎関節にも炎症は生ずるし、腫瘍が発生することもある。顎関節症を訴える患者には、顎関節に対しての検査が必要となる。
検査により顎関節そのものに病変がない患者に対する処置には苦慮する。痛みに対しては顎関節部に痛み止め軟膏を塗布したり、直接薬剤を注入したりする。内服薬の投薬を行ったり、口腔内に「かみ合せ改善装置」を装着させたりもする。顎関節症の処置には患者さんの希望も十分考慮して進めることが大切と考えている。
件の女性は私が毎週一回、根気良く顎関節の病状を聞くうち、顎関節に対する訴えは少なくなってきた。ある時、実にスッキリした表情で来院して「お酒を飲むときは、顎関節のクスリを飲んではいけなかったのですね。」と聞いてきた。数日前に同世代の友人達と数年ぶりに深酒してきたという。患者さんの顎関節病状(開口障害、カクカク音)は見事に消失していた。
(注意)この女性は心因性の顎関節症であったため、アルコールでリラックスしたことが、顎関節症を回復させたものと考える。すべての顎関節症患者に飲酒が効果がある訳ではない。心因性顎関節症と飲酒の因果関係は不明である。


